謎に包まれた顎関節症

 人間の顎は、雑食動物であるがゆえ、草をすりつぶす草食動物の顎の動きと、肉を食いちぎる肉食動物の顎の動きが、両方でき、かつ、様々な発音を駆使して言葉によるコミュニケーションを実現することができる、とても複雑な構造になっています。そして、複雑であるために、種々のトラブルを起こしやすい構造であるともいえます。

 そのなかで最近増えてきている顎関節症では、あごの関節やその周辺の筋肉に痛みがあったり、口を開け閉めするとカクカク関節部が音がしたり、口そのものがひらきにくくなったりします。
顎関節症は、まだはっきりとした原因がわかっていません。
咬み合わせ歯ぎしり(ブラキシズム)、精神的社会的ストレス、などが原因として疑われていますが、いずれのケースにも当てはまらない場合もありますし、他の要因も含めて、いくつかの要因が重なり合って引き起こすともいわれています。
したがって、その治療法も確立されていませんが、現在の一般的な治療法を紹介します。
1.セルフケア(日常生活の中で自分自身で行うケア)
歯科医の指導で、顎をいろいろな方向に動かしたり、開口訓練をする運動療法、やわらかい食事をとる、症状によってマッサージ・温湿布・冷湿布 等を行います。日常生活の姿勢に気をつけることも重要です。
2.スプリント療法
歯ぎしりの習慣がある人に対して、口腔内にプラスティック製の装置を入れて、歯の異常な接触を防いだり、筋肉の緊張を和らげます。
3.咬合治療
近年、咬み合わせが原因であるという考えを否定する研究も見られますが、奥歯の欠損など、咬み合わせの不具合は、頭痛肩こりなど、様々な不快症状を引き起こしたり、消化活動や発音の障害ともなるので、治療すること自体は、全身の健康を促進します。
他に、理学療法薬物療法を行うケースもあります。

近年の研究では、顎関節症は、長期的には回復に向かう病気であることがわかってきました。したがって、治療にあたっても長期的な視点での治療が大切です。