歯の引越し?・・・歯牙移植

 虫歯や歯周病、ケガなどで、歯を失ってしまったら、ブリッジや入れ歯、インプラントなどで抜けた歯を補って、元の状態に近い状態にしようとします。
その際、もうひとつの選択肢として考えられるのが、今回の歯牙移植です。
  移植というとおり、臓器移植などと同様に、別のところにある歯を必要なところに移植する術式です。歯の移植(歯牙移植)の場合、他の臓器移植などと違って、他の人のものをもらって移植するケースよりも、自分の歯のなかで使っていない歯を移植する自家移植がほとんどです。他の人のものではないので、拒否反応やウィルスの感染といったリスクはほとんどなく、成功率は高い手術です。
 使っていない歯というのは、多くの場合親知らずで、すでに噛みあう相手がなく機能していない奥歯などを移植することもあります。

移植の際は、歯の周りの歯根膜ごと移植します。歯牙移植では、歯根膜を良好な状態で移植できるかが最も重要で、歯根膜が移植後も生きていれば、咬合・噛み心地が正しく脳に伝達されるため、通常の歯の感覚を保つことができ、また顎骨に根付いてしっかりとくっつきます。移植後、数週間は固定する必要があります。

歯牙移植は、ブリッジと違って、周りの歯を削る必要がありませんし、入れ歯のように金属の異物をつける必要もありません。歯根膜でくっついているので、インプラントのような違和感もないし、費用も比較的安く収まります。親知らずを移植した場合には保険が適用できるケースもあります。
一方で、条件にあった歯がないと移植ができないこと、移植に使う親知らずなどは未熟なことが多く、他の歯に比べ弱いことが多いこと、そのことと関連するかもしれませんが、予後が不安定で、20年以上など長く使える場合がある反面、2年足らずでダメになってしまうこともあること(ただしその場合でも、その歯を抜いてしまえば他の歯には影響はありません)、といったデメリットもあります。

適用できるケースがあまり多くないせいか、一般にはあまり知られていないかもしれませんが、抜歯後の処置の可能性の一つとして歯牙移植があることを、覚えておいていただけたらと考えます。