台風と飛行機と山登りと歯痛

 タイトルを見て、このコラムが「気圧の低下によって起こる歯痛」についての話だとお分かりの方は、あまりいらっしゃらないかもしれません。しかし、みなさんのなかにも、台風のときや飛行機に乗ったとき、登山に出かけたとき、突然の歯痛に襲われた経験がある方はいらっしゃるのではないでしょうか。

 痛みが起こる仕組みとしては、歯のエナメル質内部に空洞があり、そこの気圧と、台風、飛行機への搭乗、登山などにより低下した外気圧との差で内側から圧力がかかり、痛みが起きるというものです。学術用語では、「気圧性歯痛」、「航空性歯痛」と呼ばれています。高い山に登るとお菓子の袋がパンパンになっていたり、ペットボトルのふたを開けた途端、中身が飛び出してしまったり、といった話を見たり聞いたりしたこともあるかと思います。また、飛行機に乗って離陸したときに耳がツーンと痛くなって、ゴクリとつばを飲み込むと治る、というのも気圧のいたずらだとご存知のことと思います。これらと同じことが歯の内部で起きているのです。
 歯のなかの空洞とは、「歯髄腔」と呼ばれ、いつもは外気圧と等しくなっています。しかし、短時間に外気圧が下がると、その変化に対応しきれず、内側からの圧力で一時的に痛みが出ることがあります。歯のなかの空洞でもうひとつあるのが、放置されたむし歯の空洞です。気圧の低下によって起こる歯痛は、通常はそれほどひどい痛みにはならないのですが、激しく歯が痛むのは虫歯があるケースがほとんどです。
 参考までに台風、飛行機搭乗、登山それぞれのときの気圧ですが、台風は大きいもので920~950hPa(ヘクトパスカル)くらい(1気圧は1013hPa)、飛行機機内は、0.7~0.8気圧、富士山の頂上では約0.64気圧、となります。こうして見ると、台風は比較的気圧の差が小さいですが、雨や風など気圧以外の天候なものや、その他の要素が痛みに関係しているのかもしれません。

 台風のときに痛み出してくすりも買いにいけない、飛行機で着いた旅先でお医者さん探し、楽しい登山が痛みでつらいことに・・・そんなことにならないための予防策としては、なんといっても、むし歯を治療しておくことでしょう。急に決まって治療が間に合わない、ということにならないよう、今のうちに治しておくのがベストです。明日から旅行でむし歯が不安な人は、せめて鎮痛剤だけでも準備しておきましょう。