バイオフィルム
ヌルヌルの内側は細菌の天国


 「バイオフィルムを退治して、歯周病から歯を守ろう!!」などと言うと、よく耳にしそうなキャッチフレーズですが、バイオフィルムとは、実際は何のことか、よくご存じない方も多いのではないでしょうか。今回は少し詳しく説明してみましょう。
バイオフィルム  バイオフィルムとは、歯科や医療の専門の言葉ではなく、微生物や細菌の研究から生まれてきた言葉で、いろいろな分野で使われています。
身の回りを見ても、口の中でなく、たとえば、キッチンのヌメヌメとした汚れとか、花を1週間いけておいた花瓶の内側、川石の表面のヌルヌルなど、いろいろなところで見ることが出来ます。
 バイオフィルムは、固い物の表面に細菌が層を成して堆積し、ヌルヌルとなったものです。しかし単に細胞が集まって増殖しただけではなく、お互いに居心地よく住めるように環境を整えた複雑な集合体なのです。その集合体の中には、水道管とでも言うべき水路があったり、表面のヌルヌルやネバネバ(細胞の分泌物で作られた脂質や多糖体の膜)が、鎧のように内部の細菌を殺菌剤や抗菌剤などの外敵から守る役割をもつなど、高い機能をもっています。
バイオフィルムは、細菌の働きを利用した浄化システムなどで、我々の生活に役立ってくれている側面もありますが、配管に付いて大腸菌やレジオネラ菌の温床となったり、医学的には、心臓のペースメーカーやコンタクトレンズなどに付着して、感染症の原因となることもあります。歯科の世界では、歯周病やむし歯の原因のひとつであり、歯周病やむし歯はバイオフィルム感染症の一種ととらえることもできるほど、深く関わっています。

キッチンのヌメヌメ汚れは、洗剤では簡単に落ちなくて、たわしなどで擦ってやっと落とすことができます。それと同じように 口の中のバイオフィルムも洗口剤などではなかなか落ちませんし、歯ブラシの届きにくい部分・・・歯と歯の間、歯と歯ぐきの境目、詰め物やかぶせ物のまわり、義歯や差し歯のつぎ目や隙間など・・・に付きやすいので、ブラッシングでも完全に落とすことはできません
一番確実に除去する方法は、 歯科医院に定期的に通って、歯のクリーニングをやってもらうことです。機械や専用の歯ブラシを使ってこそげ落とす方法なので、クリーニングの場所によっては、最初のうちは痛みを感じることもありますが、慣れてくれば、すっきりした感じがして、むしろ気持ちいいほどです。