親知らずを知ろう


 20歳前後に、「親が子供の歯への関心が薄くなったころに、知らないうちに生えてくるから」とその名の由来をいわれる「親知らず」ですが、「(昔は短命だったので、)親が亡くなってから生えてくる親を知らない歯」という説もあるようです。今回はそんな「親知らず」について書いてみます。
親知らず  「親知らず」は、第3大臼歯(智歯)の俗称で、28本の歯の奥に上下4本生えます
現代人は顎が小さくなってきているので、生え出すのに十分なスペースがなく、正しい位置にうまく生えないことが多い歯です。前の方に傾いて生えたり、横向きに生えたり、歯の一部だけしか顔を出さない時もあります。また、歯はあってもあごの骨の中に潜ったままで、口の中には歯が生えてこないこともあります。
その結果、歯肉を噛んでしまったり、正しいブラッシングができないため、むし歯や周囲炎をおこしやすくなったりします。また、前の方に傾いていたり横向きなっている場合は、ほかの歯を押して噛み合わせや歯並びに悪影響を及ぼすこともあります。
ブラッシングがしにくいので虫歯になりやすいことは述べましたが、親知らず特有のトラブルとして智歯周囲炎があります。
 うまく生えてこない親知らずの場合、歯の一部が口の中にあらわれていて、他の部分は歯肉で覆われている状態になります。歯と歯肉の間に深い袋状の隙間ができてしまい、ここに口の中の細菌や食べカスが入り、細菌が繁殖するとそのまわりに炎症を起こすのです。下の歯の親知らずは、まっすぐ生えてこないことが多く、この炎症を起こしやすい傾向にあります。

親知らずは、十分なスペースがあってまっすぐ生え、噛み合う歯がある場合は、そのままにして抜く必要はありません。また噛み合う歯がない場合でも、清潔に保つことができているのであれば、後にブリッジや入れ歯、移植などに活用できる可能性もあるので、残しておくという選択肢もあります。

しかし、それ以外の場合は、周囲の歯のむし歯や噛み合わせへの影響のリスク、痛くなってから抜こうとすると、麻酔も効きづらく、抜歯後の腫れや痛みも長く続くことが多いこと、などを考えると、痛みがなくても早めに抜歯した方が良いかもしれません
特に女性の場合、妊娠初期のつわりで栄養がとれないときや、出産後の授乳期で、夜あまり眠れないときなどに、智歯周囲炎の痛みが出るケースもあります。治療しようにも、子供への影響を考えると投薬もままならないという状況にもなりかねません。かかりつけの歯科医師に相談して、妊娠の可能性がないときに、他の歯のケアと合わせて、親知らずも早めに抜歯等の処置をしておくことをおすすめします。