おいしいを考える2

 前回はおもに味覚についてふれたので、今回はおいしさを決めるそのほかの要素について考えてみます。
匂い:匂いは、食べ物から放たれる匂い物質が鼻の奥にある匂いのセンサーと接触して伝達されます。味覚と違ってそのものに触れなくても感じる感覚です。食べ物であれば、腐った匂いのするものを口にする前に察知して、危険を避けることができます。直接触れなくても感じるという特徴は、カレーやウナギなど、食べる前から食欲をそそって楽しみを増してくれます。
また、この特徴は匂いは共有できるということにもなります。匂いの共有はそこにいるだれもが好む匂いや好きな食べ物のときはいいですが、その匂いやその食べ物が嫌いな人がいれば、その人を不快な気分にさせてしまいます。
とくに匂いが特徴的な食べ物はその人の育った国や地域、食環境によって、好き嫌いが分かれることも多いので、気遣いも必要です。
 「この匂いはおいしい匂い」と感じさせてくれる、匂いとおいしさを結びつけているものは何でしょうか。その多くは、経験や学習によって積み重ねられたものと考えられています。育った国や地域、食環境によって、好き嫌いが分かれる理由もそこにあります。
味噌、たくあん、鰹節、納豆(地域差がありますが)は、子どもの頃から食べ慣れている多くの日本人には平気であり、好ましい匂いですが、外国人には腐敗臭に感じられます。
逆にミルク、バター、チーズのような乳製品や獣肉、食べ物の匂いを引き立てたり打ち消したりするスパイスなどは、古来日本人には異臭の食べ物である一方、ヨーロッパや中近東、東南アジアの人々には身にしみついた身近なにおいなのです。

視覚:視覚のなかでも、色については、オレンジや赤・黄の暖色系の色は明るく開放的、青などの寒色は緊張感をもたらすというイメージを反映して、食べ物も暖色系の色や黄緑・緑などの中間色が食欲をそそるとされ、反対に青・紫など寒色系は食欲が減退する色としてあまり好まれません。確かに青い色の食べ物はあまり思いつきません。
器の色も同様に味に影響するようで、同じ中身のコーヒーを違う色の容器に入れて飲むと、赤に比べて黄色ではうすく、青では酸っぱく感じるという調査結果もあるそうです。
また眼から入る視覚上の情報は、直接口に入れたり、匂いを感じる前に、食品の品質を確かめる判断材料としても重要です。青々とした野菜、食べごろに熟れた果物、魚の目の透き通り具合や体の色つや、など外観が鮮度や熟度、変質や品質劣化などを表しています。
(次回に続く)