歯の硬さ

  歯という器官はとても頼もしいもので、たいていのものは噛み切ることができますし、粉々にすりつぶすことができます。本来ならなめて溶かす飴や、キンキンに冷えていかにも硬そうな氷をかみ砕いたり、ゴムみたいなするめいかを食いちぎることもできます。おせんべいやクッキー、フランスパンにゴボウやレンコン、どんなものでもへっちゃらです。歯はどのくらい硬いのでしょう。
 モース硬度という物に対する硬さの尺度があります。その基準は「あるものでひっかいたときの傷のつきにくさ」です。例えばナイフのモース硬度は約5.5なので、硬度5のガラスは傷つけることができますが、硬度6のオパールはナイフでひっかいても傷がつきません。ダイヤモンド、ルビー、水晶、オパール、ガラス、鉄、石 といろいろな物質を硬い順に並べてみました。これらのなかで歯(エナメル質)はどのくらいの硬さだと思いますか。答えは水晶と同じくらい、硬度7です。歯のエナメル質はヒトの身体の中でも、一番硬い組織といわれています。
主な物質の硬度は以下のとおりです。

硬度10:ダイヤモンド
硬度9:ルビー、サファイア
硬度8:トパーズ
硬度7:水晶、歯(エナメル質)
硬度6:オパール、トルコ石
硬度5:ガラス、アパタイト (ナイフは5.5)
硬度4:鉄、真珠、プラチナ
硬度3:さんご
硬度2:岩塩、純金
硬度1:チョーク

そんな硬い歯を削るときには、ダイヤモンドを使用します。歯の表面(エナメル質)を削るときにキーンという高い音がするエアータービンという器具を使います。毎分30~50万回もの高速で回転するエアータービンの羽に取り付ける刃先の先端に、ダイヤモンドの粉末が吹付られているのです。
ダイヤモンドでないと削れないくらい硬い歯ですが、その反面「酸」には弱く、溶けてしまいます。お口のなかの歯垢(プラーク)に潜む虫歯菌(ミュータンス菌)は、皆さんがが食べたり飲んだりしてお口に入った糖分を利用して「酸」をつくり、その「酸」に長い時間さらされているとエナメル質は溶けてしまいます。

いつでも硬い歯で硬い食べ物がおいしく食べられるよう、毎日のお口のケアにはげみ、数か月に一度は歯科医院に通って、定期検診を受診しましょう。