入れ歯と唾液

入れ歯を使われている方のなかには、ときに痛みや違和感、話しにくさ、食事の味気無さなど、問題を感じている人もいらっしゃいます。
入れ歯が変形するなど壊れてしまったり、そもそも入れ歯が合っていなかった、ということもありますし、歯ぐきがやせたりといった使われている方の変化が原因のこともあるでしょう。もうひとつ、入れ歯の不調のときに原因として考えられるのが、唾液の減少です。
 入れ歯を使われている方は、唾液が少なくなることによる口のなかの乾燥でいろいろな症状を起こすことがあります。
 例えば、唇や舌の痛み、入れ歯自体の痛み、唇や頬が乾燥して歯や入れ歯にピタッと貼り付いてしまう、食べ物の味がしない、口臭がひどくなる、などです。
 これらの症状のなかのいくつかはドライマウス = 口腔乾燥症 の症状ですが、唾液は入れ歯の安定にも大事な役割を果たしているので、いっそう深刻と言えるかもしれません。
唾液はご存知の方も多いと思いますが、食べ物の消化を助けるはたらきや、口の粘膜を保護するはたらきをしています。
入れ歯においては、唾液のネバネバが緩衝材として口のなかの粘膜の表面を覆って粘膜を守っています。
いっぽうで、粘着剤として歯茎に吸盤が付いているかのように入れ歯を吸い付ける役割を担って、入れ歯の安定に貢献しています。
唾液が減ってくるとこれらのはたらきが十分に機能せず、入れ歯が不安定になり、痛みなどの症状が出ます。

対策として、お口のなかの乾燥を防ぐため、ゼリー状の人工唾液や口腔用の保湿ジェルを口の中の舌や頬の粘膜に塗ることで症状が和らぎます。寝る前にお口の中に塗ると夜寝ているあいだも快適に過ごせます。
  唾液の減少の原因は、加齢(噛む力が弱くなり唾液の分泌が減る)や、ストレス(交感神経と副交感神経のバランスが崩れ唾液が出にくくなる)、糖尿病・シェーグレン症候群(自己免疫疾患の1つ)・エイズ・パーキンソン病などの病気、血圧降下剤・抗うつ病薬・利尿薬・抗アレルギー薬・鎮痛薬など薬の副作用、などが考えられ、原因はお口のなかにとどまりません。

お口のなかが乾燥することは、決して珍しい病気ではなく、多くの人に見られる症状です。日常的に口の渇きが気になるようでしたら、医師に相談して原因をつきとめて、それに合った対応を取りましょう。